2008年10月16日から18日中国北京の清華大学で開催した2008年度「中国環境行為学会(EBRA)」に参加しました。

 環境心理学は環境と人間心理の間の相互関係と相互影響、つまり人間と環境の関係を研究する科学で、「中国環境行為学会」は中国で初めて心理学と建築学二つの領域の研究者たちが共同で結成運営した団体です。その大会で、生理学、心理学、社会学、建築、都市計画、文化人類学など、多くの分野の研究が一つの場において、発表と議論ができます。
1993年から始めたこの大会は、今回で8回目になりました。今回は文化と経済が急速に発展している中で、社会各階層で生活する人々の心理需要と価値観などに基づいて、その生活品質の改善を主題としました。私が発表したのは、中国の都市公園で毎朝集まって太極拳やダンスなど運動する老人たちの日常生活、それに近年の都市再開発による影響についての研究です。

 中国で開催する今回の大会には、世界各国の研究者が集まりました。日本からも、環境心理学会(MERA)をはじめ、多くの先生と大学院生が参加して、各領域の最新の研究論文を発表しました。元々、現在中国で環境心理学を専門とする先生たちは、その多くが日本での留学か共同研究の経験があって、今も強い連携関係があります。以前は大会で発表するのは英語のみに規定されたが、今回では特別に日本語での発表も認められました。日本と中国の環境心理学分野での協力関係は、これからいっそう強くなると思います。

 私は中国上海の出身ですが、北京に行くのは初めてです。ちょうどオリンピック大会が終わったばかりなので、学会の合間に北京市を散策しました。「鳥の巣」や国家水泳センターなど新築した有名な建物を見て、確かにすごいと思いましたが、それ以上に良いものもあります。大規模宮殿のすぐ近くに散らばっている四合院や、巷に昔と同じように人溢れる市場などを見て、生き生きとした北京の都市風景を頭に焼き付けました。
 日本に長年滞在してスケールの小さい町や道路に慣れた私にとって、もう一つ印象的なのは、北京のスケールが大きいことです。地図上で街区2つしか離れてないところに行く時、 2時間もかかりました。交差点を間違って、次の角で曲がろうとしましたが、結局また1キロ以上歩きました。それは、極端な例かも知れませんが。

 今回、私は大阪工業会から助成金を頂いて、自分の研究を世界中の研究者たちと一緒に議論を行い、最新の研究と情報も受け取ることができました。また、北京の建築と都市計画を体験すると同時に、一般市民の生活風景も楽しむことができました。本当にありがとうございました。私は良い研究成果ができるよう、さらに、自分もいつか後輩の研究者たちの研究に貢献できるよう、これからも頑張りたいと思います。
改めて、感謝をいたします。

(大阪大学工業会誌「テクノネット2009年1月号」p.26より転載)